ブレイクスルー社会学
われわれの「社会」の学問、社会学は、身近にも感じるが、実は広くて深いもの。効率よくまとまったゼミネット公務員講座の社会学を、ちょっと読み込んでみるWEB版特別講義です。第9回は「経済だけじゃない、ミクロ社会学って?」!
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第9回 経済だけじゃない、ミクロ社会学って?

1 ミクロ社会学
個人をこえたより大きい単位で社会を考えるマクロ社会学に対して、個人や個人の相互作用を重視する社会学をミクロ社会学という。主にアメリカで発展し、機能主義理論を批判して現在でも影響力をもつ。

2 ブルーマーのシンボリック相互作用論
シカゴ学派のブルーマーは、ミードらプラグマティズムの理論を継承してシンボリック相互作用論(シンボリック・インタラクショニズム、象徴的相互作用論とも訳される)という方法論的立場を提示した。それによれば、社会は有意味なシンボル(言葉や身ぶりなど)を介した諸個人の相互行為によって成り立っている。しかし、わたしたちの日常生活を考えてみても、同じ言葉がその場その場で異なる意味をもつことは多い。シンボルの意味は個人の解釈によって決まるからだ。だから、ブルーマーは行為や行為によって成り立つ社会についてあまりにも一般化した理論を作ることを避けるべきだと考えた。世論調査のような統計的方法も諸個人の多様性を無視して、一般的な傾向を示すだけなので、より人々の生活に密着した参与観察やインタビューなどの質的調査を重視した。

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3 シュッツの現象学的社会学
ウェーバーの理解社会学は、人々の動機を社会学者が理解しようとするものだが、はっきり言って、他人の心が分かるわけがない。では、理解社会学の正しさはどうやって証明できるのか、とシュッツは考えた。それは人々が毎日の生活で感じている現実感(リアリティ)を知ることによって可能になるのではないか。この人々が現実に生きている世界は生活世界と呼ばれる。そこではその世界を疑ったりしない(判断停止、エポケー)のでそれを自然的態度という。しかし、わたしたちが生きる現実は複数ある。例えば、夢を見ているときや何かに熱中しているとき、わたしたちは普段の生活とは別の現実を生きている。これが多元的現実である。多元的現実のそれぞれにはレリヴァンス構造と呼ばれる意味の関係性の体系がある。例えば、テレビのメロドラマを見ているときには恋愛が最も重要な関心だが、ハッと気付くともう夕飯の時間で、ご飯の支度が最も重要な関心になる。これはドラマの世界と生活世界でレリヴァンス構造が異なるからである。シュッツはフッサールの現象学という哲学の方法を用いたので、彼の社会学は現象学的社会学と呼ばれる。

4 ガーフィンケルのエスノメソドロジー
ガーフィンケルはパーソンズの弟子だが、パーソンズを批判して、むしろシュッツの理論を継承した。彼によれば、エスノメソドロジーとは、ある集団に常識として共有された(エスノ)方法(メソッド)を研究するものである。わたしたちは、例えば自分の家、学校の教室、電車の中でそれぞれ違ったふるまいをする。それは、それぞれのふるまい方のルールがあるからだ。しかし、わたしたちのふるまいを決めているのはそれだけだろうか。家に帰ったとき、両親が夫婦ゲンカをしていたのと、仲良くダンスしていたのでは、次にあなたのとる行動は違うだろう。わたしたちの行動を決めるのはルールよりも、むしろその場その場の状況判断なのだ。エスノメソドロジーはこのような状況判断の仕方に注目するので、観察や会話分析などの方法がよく用いられる。

5 ゴッフマンのドラマツルギー・アプローチ
ゴッフマンは『行為と演技』において、社会生活を舞台劇になぞらえて理解する方法を提示した。つまり、わたしたちは舞台で観客に対してある役柄を演じてみせる演出家兼役者みたいなものである。これは、何も人をだましているという意味ではない。家庭や学校や職場という様々な舞台で、わたしたちに求められる役柄は異なるから、それに合わせてうまく自分を提示し、自分の印象を操作する技術が必要なのだ。これがドラマツルギー(本来の意味は劇作術)である。


ゼミネット公務員講座で、わかりやすく解説しています。
次回は
「アメリカ社会学のまとめ&ドイツの社会学」です。ご期待ください。

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