ブレイクスルー社会学
 われわれの「社会」の学問、社会学は、身近にも感じるが、実は広くて深いもの。効率よくまとまったゼミネット公務員講座の社会学を、ちょっと読み込んでみるWEB版特別講義です。第7回は「さらにじっくりパーソンズ!キーワードはAGIL」!
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第7回 さらにじっくりパーソンズ!キーワードは「AGIL」

1 AGIL図式
AGIL図式:パターン変数の考え方を発展させて作られたのがAGIL図式である。これによって、あらゆるシステムの働きが説明できる、とパーソンズは考えた。AGILとは、システムの存続に必要な4つの機能的な条件(これを機能要件という)、すなわち適応(Adaptation)、目標達成(Goal attainment)、統合(Integration)、潜在性(Latency)の頭文字をとったものである。分かりやすくいうと、どんなシステムも外部環境に適応しながら(A)、その目標や目的に向かって(G)、結束して(I)いく。また、それらのやり方(パターン)を維持するための潜在的な働き(L)が必要である。これを全体社会のシステムに当てはめてみると、状況に適応するために必要な資源を手にいれる手段である経済がA、目標を達成するために様々な意思決定をする政治がG、社会成員をまとめていく地域社会がI、これらの背後にあって、そのやり方を維持していくための文化や教育がLということになる。これら4つの分野は全体社会のシステムの中でそれぞれの機能を担いながら、それ自体もまたシステムであるので下位体系(サブシステム)と呼ばれる。よって経済システムや政治システムの中にもさらにAGILそれぞれの機能があるのである。
イラスト
2 構造=機能分析
構造=機能分析:社会現象は様々な要素(変数)の相互作用によって起こる。だから変数間の関係を連立方程式のような形で表現できれば、社会現象の因果関係を解明できる。しかし、社会現象はとてつもなく複雑な関係の上に成り立っているので、それは事実上不可能だ。そこでパーソンズは、変数のうち比較的変化しにくいものを定数とし、他の変数がその安定を支えていると考えることによって、問題を考えやすくした。ここで変化しにくいものが構造、変化しやすいものが機能である。構造=機能分析とは、機能が構造を安定させる働きを明らかにするものである。比喩的には、人体という構造を安定させているのは、呼吸、消化、循環などの諸機能であることを考えればよい。社会学的には、例えば女性の社会進出によって家族内での女性の役割も変わってきているが、家族という制度自体は続いている。女性が家事をしなくなっても、外食産業などがその機能を代わりに果たすことによって、家族という構造を維持しているのだ。
 パーソンズの理論は弟子のマートンやスメルサーによって、より具体的なレベルの研究が進められたが、用語が抽象的で難解なうえ、文章まで分かりにくかったので、ミルズはそれを「誇大理論」と読んで批判した。また、構造を中心とした考え方は、人々の相互作用を軽視しているとしてミクロ社会学からも批判された。


ゼミネット公務員講座で、わかりやすく解説しています。
次回は
「こつこつ深めるマートンの理論・分析」です。ご期待ください。

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