ブレイクスルー社会学
われわれの「社会」の学問、社会学は、身近にも感じるが、実は広くて深いもの。効率よくまとまったゼミネット公務員講座の社会学を、ちょっと読み込んでみるWEB版特別講義です。第3回は「ここでも出てくる、わかりやすいぞ大御所ウェーバー」!
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第3回 ここでも出てくる、わかりやすいぞ大御所ウェーバー

1 理解社会学
ウェーバーは、人間の行動の中でも主観的に意味づけられた行動を「行為」と呼んだ。そして行為者にとっての行為の意味を理解し動機を解明しようとするのが理解社会学である。それは失恋して、なぜ恋人が自分のもとを去ったのか考えるのに似ている。
【ここがポイント!】
恋人が去っていった理由…例えば、遠距離恋愛だったとか、最近ケンカをしたとか、見て分かることだけでは失恋の因果関係を十分に説明できない。遠距離恋愛でも全てのカップルが別れるわけではないし、ケンカしても仲直りできたかもしれないからだ。別れた理由を本当に解明するためには、恋人が遠距離恋愛やケンカについてどのような気持ちや感情をもっていたのかを理解しなければならない。理解社会学はこのように見て分かることに加えて、行為者の動機まで考えることによって社会的行為を解明しようとするのである。


2 理念型と社会的行為4類型
さて、恋人が去った理由を考えるといっても、現実は複雑なので考えがまとまらず、あーでもない、こーでもないと悩むだろう。こういう場合に考えをまとめる方法としてウェーバーが考えたのが理念型である。例えば「彼女は寂しがりやでいつも一緒にいないとダメなタイプだ」とか「遠距離恋愛では会う回数よりこまめな連絡が重要だ」というように物事の特徴的な一面を強調してタイプ分けするのである。だから、理念型は現実を表しているというより、思考を整理するための道具だということができる。 理念型のよい例が社会的行為の4類型だ。それは、伝統的行為、情動的(感情的)行為、目的合理的行為、価値合理的行為である。伝統的行為とは、習慣的にしてしまう行為。情動的行為とは喜怒哀楽に突き動かされてしてしまう行為のこと。この2つは行為する本人もあまり深く考えて行為しているわけではない。それに対し、目的合理的行為では、行為者が目的を達成するために最もよいと思われる手段がとられる。もちろん、それがいつも正しい判断だとは限らないのだが。一方、価値合理的行為はその行為自体が行為者にとって価値がある場合である。だから行為の結果はあまり気にされない。
【ここがポイント!】
例えば、毎日ご飯を食べるのは習慣だから伝統的行為。やけ食いは情動的行為。やせようと思ってカロリー計算しながら食べるのは目的合理的行為。太ってもいいや、食べることこそ人生最大の喜び!というのが価値合理的行為、という感じ。
社会学イラスト
3 価値自由
社会学の研究をするときに、自分の理想や好みで価値判断してはいけない、という考えを没価値性という。これと価値自由とはちょっと違う。価値自由の考え方では、わたしたちは自分の理想や価値にとらわれることは避けられないからこそ、自分がどのようにかたよった考え方をしがちか自覚することが大事なのだ。そうすれば、かたよった考えや客観的でない考えをなるべく避けることができるだろう。
【ここがポイント!】
給食当番の例で考えてみよう。給食当番は好きな子にだけ沢山盛り付けてはいけないけれども、人を好きになることまで禁じられてはいない。そして好きな子をひいきしないためには、自分がどの子を好きか自覚していなければならない。つまり自分がもっている価値観を自覚することによって、その価値観にとらわれないようにすることが価値自由なのである。


4 「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」
この長いタイトルの本がウェーバーの代表作だ。この本では、なぜ西洋の、しかもプロテスタントの国で資本主義が発達したのかという問題が扱われている。プロテスタント、特にカルヴィニズムは禁欲的な教えだから、金もうけが目的の資本主義とは全く逆のように見える。しかし、天国にいけるかどうかは神だけが決めることだという教え(予定説)を信じるプロテスタントは、自分の職業を神から与えられた使命と考え、神のために一生懸命働くことで救いの確証を得ようとした。結果として産業が発達し資本主義が成立したのである。

ゼミネット公務員講座で、わかりやすく解説しています。
次回は
「南北戦争後にスタート!アメリカ社会学の発展」です。ご期待ください。

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