ブレイクスルー社会学
われわれの「社会」の学問、社会学は、身近にも感じるが、実は広くて深いもの。効率よくまとまったゼミネット公務員講座の社会学を、ちょっと読み込んでみるWEB版特別講義です。第2回は「とことん考える、社会学ってなんだぁ〜?デュルケムとジンメル」!
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第2回 とことん考える、社会学ってなんだぁ〜?デュルケムとジンメル

1 機械的連帯から有機的連帯へ…デュルケム
『社会分業論』においてデュルケムは原始社会から近代社会への変化を環節的社会から有機的社会への変化として捉えた。環節的社会では人々はまだ個性化しておらず、金太郎アメのようにどこで切っても同じように見える(環節とはミミズみたいな体のこと)。人々は同質的な部品にすぎないから、これを機械的連帯という。社会が発達して分業が進むと人はそれぞれ個性や働きをもつようになり、お互いになくてはならない相互依存の関係になる。これが有機的連帯である。
社会学イラスト1
2 デュルケムの社会学主義
『社会学的方法の基準』において、デュルケムは社会学の対象を、個人の外側にあって、個人を拘束する社会的事実であるとした。社会は有機体のようにそれ自体で存在するのではなく、人間の意識によって表されているのだが、単なる個人意識の集合ではない。
【ここがポイント!】
例えば、事故を起こさずに交差点を通ることができるのはなぜだろう?
→それは、交通ルールがあるから。 交通ルールはわたしたち個人が決めたわけではないが…みんなが従っている。
このように、個人意識とは異なる集合意識(集合表象)が客観的に存在しているとデュルケムは考えた。
社会学は個人意識を研究する心理学のようにではなく、自然科学が対象を扱うように、社会を「物のように」研究することができるのだ。
社会学主義とは、社会的事実や集合意識のように、物理学的でも生物学的でも心理学的でもない社会学的要因によって社会現象を研究しようとするものである。
社会学イラスト2
3 デュルケムの『自殺論』
デュルケムの社会学主義の好例が彼の代表作『自殺論』だ。彼はそれまで自殺の原因と考えられていた、精神病、人種、遺伝、気候、模倣などの説を統計を使って退けた。それらは個人の自殺は説明できても、それぞれの社会に特有の自殺率を説明できない。そのためデュルケムは自殺の社会的なタイプを3つ考えた。それが自己本位的自殺、集団本位的自殺、アノミー的自殺である。
【ここがポイント!】
<自己本位的自殺>
カトリックに比べ、プロテスタントに自殺が多いのはなぜ?
→プロテスタントの教会がより自由で、社会的なつながりが弱いからだ、とデュルケムは考えた。同様に、家族のつながりや政治的なつながりが弱くなると自殺は多くなる傾向があった。
★例えば…離婚者は既婚者より自殺が多く、戦争中には愛国心などで人々の連帯感は強くなるので自殺は減っていた。
このように、社会の統合が弱くなると、社会は自殺を抑止することができなくなり、個人は生きる意味を失って、勝手に自殺してしまう。
<集団本位的自殺>
個人に対する束縛が弱くなって起こるのが自己本位的自殺だったのに対し、束縛が強いゆえに起こる自殺が集団本位的自殺である。
★例えば…一部の未開社会では妻が夫の後を追って自殺することは社会が強制する義務であった。また、近代社会では軍隊内の兵士の自殺が集団本位的自殺である。
軍隊では厳しい規律によって個人の自由や個性は奪われる。それによって個人の生命の価値が軽く見られ、自殺への抑止力が弱くなるのである。
<アノミー的自殺>
人間の欲望はふつう社会によって制限されている。だから程々の幸せで満足して生きていけるのである。しかし、急激な社会の変化によりこの制限がなくなると、社会が個人の欲望を抑えきれなくなり、人間の欲望は限りなく大きくなってしまう。この状態をアノミー(無規制状態)という。アノミーの状態になっても人間の欲望はいつも満たされるわけではないから、焦りや不満や幻滅が生じ、自殺を誘発する。それがアノミー的自殺である。産業が盛んになった近代では商工業者は慢性的なアノミー状態にあるので自殺が多かった。アノミー的自殺は現代の自殺の典型なのである。アノミー的自殺とは逆に、欲望充足の道が閉ざされた絶望によって起こる自殺を宿命的自殺と呼んだりもする。
4 ジンメルの「形式社会学」と「生の哲学」
ジンメルは、コントやスペンサーの「社会実在論(社会を一つの生き物=有機体ととらえる)」と、これに対する「社会名目論(社会は諸個人の集合体にすぎない)」の、これら両方を批判した。社会は、個人や集団の相互作用であり、個人にはそれぞれ心があるのでこの相互作用は心的相互作用と呼ばれる。個人はこの心的相互作用により社会を形成するから、心的相互作用は社会化の形式でもある。ジンメルは、社会学の研究対象はこの心的相互作用(=社会化の形式)であると主張した。これが形式社会学である。
【ここがポイント!】
★相互作用の形式には例えば…闘争がある。国と国との戦争は政治学が研究し、スーパーの安売り競争は経済学の分野が研究する。しかし、それらには闘争や競争という相互作用の形式が共通している。この形式としての闘争を研究するのが社会学なのである。
★相互作用の形式には他に…上下関係・模倣・秘密・社交などがある。これらの形式の上に経済、宗教、芸術といった文化内容が成立する。ジンメルはこの文化内容により形式を重視したので、後に文化社会学という立場から批判されることになった。しかし、ジンメルは形式だけでは不十分であることも理解しており、晩年には人間の具体的な人生経験を重視する「生の哲学(セイノテツガク)」の立場をとった。生の哲学は、近代的な合理主義や理性的な割り切りを批判して、個人の経験や感情を重視した。

ゼミネット公務員講座で、わかりやすく解説しています。
次回は
「ここでも出てくる、わかりやすいぞ大御所ウェーバー」です。ご期待ください。。

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